昔々の話。年とったら血圧は年齢+100位で良いんだという乱暴な都市伝説もありましたが、そうでなくても高齢者の血圧はそれほど下げなくても良いんじゃあないかなあというぼんやりとした雰囲気は漂っておりました。
しかし2008年、この都市伝説に終止符を打つ論文が出ました。HYVET studyという論文で、しかもN Engl J Medというかなりグレードの高い雑誌に。
そしてこの大規模臨床試験の凄いところはそのデザイン。なんと80歳以上の人限定でのエントリー。80歳以上で血圧が160-199mmHgの人を対象に、150/80mmHgを下回る目標で降圧療法を開始するだけ。至ってシンプルです。
その結果、しっかり血圧を下げた群では脳卒中を30%、脳卒中死亡を39%減少させ、さらには心不全まで減少させたという結果が出ております。そして余りにも効果の差が出すぎたので、試験は満期を待たずに終了。血圧降下群の圧勝でした。
この臨床試験から言えることは、矢張り幾つになっても血圧は下げておいたほうが良いということです。これ即ち、血管の老化で血管壁が脆くなっている訳なので、血圧を下げて血管の負担を減らしましょうという、至極尤もな結論であるかと思われます。
N Engl J Med 358:1887-1898,2008