プリンセス・トヨトミ
「鹿男あをによし」の次作です。相変わらず、突拍子もない設定をぶつけてきます。この本に関しては内容部分にある程度障らないと論評できないので、あらすじを少しなぞります。
話は、会計検査院の一行が大阪府庁周辺の会計監査を行う所から始まります。その際、OJO(オー・ジェイ・オー)なる団体に疑惑の目が向けられます。そしてOJO監査の過程で「大阪国」なるものの存在が顕になってきます。その一方で、セーラー服を着て登校する男子中学生を巡る悶着が起こります。そしてこの物語のkey manがお好み焼き屋の大将。
これでは何が何やら解りませんが、読み進めてゆくうちにこれらが上手にリンクして行きます。前半からグイグイ読ませる「鴨川ホルモー」とは異なり、本作の前半は若干dullです。勿論、伏線かなと思っていたものがそのまま放置されている所もあります。
舞台は、大阪城を中心とした大阪府庁とその周辺、そして城下町である空堀中学校と近隣の「からほり商店街」。狭いスペースで話は展開されます。全て徒歩圏内です。この作者はどこまでが事実でどこからが作り話なのかよく解らないので、先日大阪城まで実況見分に行きました。
大阪城が徳川家によって徹底的に破壊され埋められて、その上に新たに築城されたことは知っておりましたが。中にエレベーターがあって実は8回建て?実際に、見てきました。本当に鉄筋コンクリートで中にはエレベーターがありました。8階までありました。あれは、城と云うよりは博物館です。中に入ってしまうと、城の中にいるという実感が全くないです。姫路城や松本城の感覚で、大阪城を訪れると軽く混乱します。
残暑厳しい9月末、大阪城大手門を出て右手を見ると、大阪府庁が見えます。その隣の大阪府警とNHK大阪に挟まれた通りを西に。谷町筋に沿って少し下るとやや寂れた感じの「からほり商店街」があります。本当にありました。アーケードの入り口にはちゃんと「はいからほり」とダジャレが書いてあります。しかも作中に書いてある様に、軽い下り坂。少し感動します。お好み焼き屋と団子屋が矢鱈多いなぁと思いながら、途中右手に松田優作も通ったと云うお好み焼き「富紗屋」あり。コテコテの見事な大阪弁を喋る幼児をみて「おお、deep Osaka」と妙に感動しつつ歩いてゆくと、黄色い値札のスーパー玉出発見。これが噂のスーパー玉出か、レモン1円、なめ茸1円。どうやって利益出しているのだろうと値札を訝しく眺めているといつしか商店街は終了。来た道を振り返ると立派な上り坂。上町台地だなぁと再確認。その後、北に上って作中で「己さん」と呼ばれる榎大明神へ。本当に在りました。しかし思ったよりも小さい。その脇には直木三十五の石碑もあります。地元では大切にされているのか、綺麗に掃除されておりました。
本書を半分くらい読んだところで、大阪城周辺散策したのですが、これが正解。実際に見たことで位置関係が明瞭になり、大阪府庁(工事中ですが)の玄関はこちら向きで、大阪府警は隣にあって、大阪城がこう見えてと霧が晴れるようでした。帰ってから、残り半分楽しく読めました。
映画化もされていたので、DVDも見てみましたが。これは、う~ん、微妙でした。あらすじ知っているからついて行けるけれども、初見でこれは多分訳わからないだろうなぁ。矢張り、書籍で読むのが一番です。読み返すかどうかは微妙ですが、鹿男よりは良い出来でした。