京極夏彦作の短編集です。以下、京極堂シリーズを読んだことのある人対象の書評です。
今回は、妖怪の類いは一切出てきませんし、神主も出てきません。勿論、虚言癖のある少年が世間を騒乱させて、それを眉目秀麗な探偵が意味不明な理屈と剛腕で解決するといったストーリーでもありません。
舞台設定は、恐らく昭和40年代と思われます。主人公は少し癖のある小学生3人組。舞台は主に学校かその通学路。所詮は小学生なので行動範囲は限られています。内容はというと、これが実に下らない。小学生目線の与太話でストーリーは進んで行きます。通学路でいつもすれ違う、常にアンパンを食べている女性にあだ名をつけてみたり、生徒会の立候補で揉めてみたり。実に下らない与太話です。
しかしこの小学生、中身はかなりオッサンです。我々50歳前後のオッサンが中身そのままに小学生に戻ったらという、昔ドリフであったもしものコーナーみたいな物語です。感動もなく、蘊蓄もなく。「ああ、そう言えばそんなの流行っていたなあ。そうそう、消ゴム集めてた。通行人に渾名つけてたなぁ。」などと、軽くノスタルジックな気分になれる小説です。京極夏彦さん、たまに変わった文章作ります。私的には、800ページの京極堂シリーズの方を読みたいのですが。昭和レトロ大好きな人向けです。