先日、非常に読みにくい本に手を出してしまったので、口直しに読みやすそうな本を。
タイトルを読む限りは、昔は海賊といわれるほど悪かったけれども、あることを契機に心を入れ替えて全うに働いた人の話かなと思っていたのですが、全く違いました。海賊は余り意味なしでした。文字通り、海上で縦横無尽に商売していたので当時海賊と呼ばれていただけのことです。しかも、商売敵から。なんでこんなタイトルつけかのかな?
復員兵の扉絵と百田尚樹というところから、戦争アレルギーの人は本を手に取りもしないでしょう。(因みに、戦争の対義語は交渉・対話、そして平和の対義語は混沌・無秩序であると考えております。)タイトルと扉絵からは、意図的にそうしたのではないかと邪推したくもなります。しかし内容は非常に立派なものでありました。
時代は大東亜戦争(太平洋戦争)の終戦後。玉音放送が流れるあたりから始まります。国岡商店という石油販売会社が物語の舞台です。有名な話ですが出光石油がモチーフになっております。石油小売業の国岡商店が外資石油メジャーの圧力と官僚機構の妨害に屈せず、自社の儲けのためではなく日本という国の将来のために働くのだという正論を武器に、数々の難局を超えてゆくお話になっております。この点、半沢直樹シリーズに通ずるものがあります。しかし、外資と官僚そして業界団体と闘うという構図は、漫画のサラリーマン金太郎の方が近しいかもしれません。
最初読み始めた時は、ABCD包囲網やハル・ノートが出てくるのかな、出てきたら話が長くなるなと思っていたのですが、殆ど出てきません。流石に話の流れから一部には触れねばならないのですが、必要以上に煽りません。それよりも国岡鐡造の人となりに吸い寄せられ、男気溢れる部下の動きに目を奪われ、難局が迫るたびにここはどう乗り切るのだろうとぐいぐい先を読みたくなります。GHQも何故か国岡の味方をしてくれます。余りにも出来過ぎです。
流石に放送作家の書いた小説だけあって、読みながら情景が浮かんできます。場面展開のスピーディーさは勿論、深く掘り下げる部分は無駄なくらい掘り下げて、それでいて諄くならない程度で引き上げております。この辺、上手です。初手から映像化を念頭に作成していたのでしょうか、東京・神戸・門司・満州・イラン・米国と舞台は多岐にわたるものの、ページ稼ぎのための不要な描写はなく、会議室と邸宅があれば低予算で映画化できるななどと下司な勘繰りも入れてみたくもなります。
今年のお盆は雨だったので、2日で読破してしまいました。2回読むかと云われると、読まないと思いますが、文庫化もされているので、これはbuyだと思います。