そしてこれを契機に胃潰瘍・十二指腸潰瘍の患者から次々とピロリ菌の培養に成功するのですが、これが潰瘍の原因菌であると決定付けるには、Kochの第3・4の原則(詳しくはネットで調べて下さい。ざっくりいうと、分離された菌で病気の再現性があるということです)をクリアしなければいけなかったのです。
そこでMarshallさんは、胃炎の患者から分離培養された菌溶液をなんと自ら飲んで急性胃炎を発症し、そこから再び菌の存在を証明して、見事Kochの4原則をクリアしたのです。
こうなってしまうと、今迄反対してきた偉いさんも渋々菌の存在を認めざるを得なくなりました。そしてこの菌はHelicobacter pyloriという新しい名前を貰い、その後20年以上にわたって世界中の消化器病学者の半数以上がのめりこむ研究合戦の火蓋が切って落とされたのです。
かくいう私も、大学院時代にピロリ菌で博士号を取りに行ったミーハーな研究者の一人です。
次回は、我が国でのピロリ菌感染状況についてのお話です。