ラーメン発見伝・ラーメン才遊記・ラーメン再遊記
ラーメンおたく必読の漫画です。3部作構成で途中のシリーズから読んでも楽しさ半減です。読んでみたい人は、ぜひ発見伝から読んでください。
発見伝は、ラーメンおたくの会社員が自分で屋台を引きながら理想のラーメン像を求めて色々な料理人と対決し成長していく物語です。この対決するライバル達が微妙に実在の店に似ていて、読んでいてニヤニヤしてきます。そんなライバルたちの中に完全オリジナルのキャラの「らあめん清流房」店主芹沢達也がいます。これがまた妙にキャラ立ちしていて、かなりのひねくれ者ではあるがラーメンの腕は超一流という、主人公の壁となる敵役としては申し分ないキャラなのです。最後は芹沢のほうが主人公に思えてくるくらいふてぶてしい振舞です。
時代的には、東京では麺屋武蔵に大行列ができ、神奈川では中村屋が天空落としの湯切りで一斉を風靡。テレビチャンピオンでは和歌山の井出商店がクローズアップされ、あちこちの都市にラーメンテーマパークが乱立していた、ラーメン百花繚乱ともいえる時代の話です。あらゆる業態の飲食店がラーメン店舗を新規出店し、業務用スープを使った素人料理でもそれなりに繁盛していた、ある意味狂気ともいえる時代でした。
しかしそんな時代も長続きせず、ラーメンブームは終焉を迎えます。各地のラーメンテーマパークも閉鎖されてしまいます。そして当然ながら発見伝も連載終了となりました。
これで終わりかなと思っていたのですが、作中に出てくるライバル役の「らあめん清流房」店主芹沢達也がキャラ立ちしておりまして、こんどはこのラーメン店主を主人公にしたスピンオフ的な作品、ラーメン才遊記が発刊されました。
「らあめん清流房」店主の芹沢がコンサル会社を立ち上げて、新入社員の汐見ゆとりと一緒に流行らない店のテコ入れをしていくという話なのですが、汐見ゆとりをスーパー創作料理人という設定にしていたので、最終的に創作ラーメン合戦の様相を呈して終了しました。
そこで第3弾の再遊記は少し切り口を変えてきました。やはり芹沢が主人公なのですが、彼が第一線を退いて半分隠居生活に入り、そこに次々と面倒ごとが舞い込んでくるというスタイルをとっております。
安楽椅子探偵のところへ次々と揉め事が持ち込まれるパターンはよくある話なのですが、今度は話の展開を楽しむというよりは、かなり蘊蓄多めのスタイルに変わってきております。ラーメンの歴史と発展をアカデミック調に組み立て、既存のグルメ漫画とは一線を画する内容になっております。終盤の美味しんぼも蘊蓄多めの説明多めになってしまい食傷気味になりましたが、本作はそこまでクドく仕上げておりません。作者は朝から晩までラーメンのことを考える生活を何年もしていたのでしょう、ラーメンの歴史はもとより、地域地域でのラーメンの独自進化についても詳細に分析しております。真面目に書いたら新書が一冊できそうな勢いです。それを漫画仕立てにしてラーメン好きの読者が「うんうん」とうなずきながら読み進めるという、割と読み手を選ぶ漫画になってしまいました。しかも、前作を読んでいないと話が見えない。出版社的にこれで大丈夫なのかと心配してしまうほどです。
ラーメンテーマパークに足しげく通い、麺の加水率にもこだわりながらラーメンを啜っていた、自称ラーメン通のひとは楽しく読めると思います。