容疑者xの献身
東野圭吾の名作。福山雅治演じる天才物理学者湯川先生シリーズの長編です。アパートで暮らす母子がとある拍子に殺人を犯して、それを隣に住む数学教師の石神が完全犯罪を企てるという始まりです。この数学者石神が曲者で、高校の数学教師をしているのは勿体ないくらいの天才数学者。湯川の大学の同期です。
放っておいたら間違いなく完全犯罪になっていたであろうこの事件に、たまたま湯川が関与します。何の気ない石神との邂逅から湯川はちょっとした違和感を覚えて独自に推理を開始します。
緻密な論理を組み立てて完全犯罪を目論む石神、怪しいと思いつつ攻めあぐねる警察、別次元で独自の推理と検証を進める湯川。セリフにわざわざルビを振るような伏線や、複雑な見取り図はなし。だれに肩入れして読んでいても、最後は「やられたー! そう来たかっ!」と思わせる一品です。
非日常が舞台の小説は独自の世界観を頭の中に構築してからでないとどっぷり嵌れないのですが、本作はどこにでもあるようなアパート、ありふれた弁当屋、普通の高校と通勤路に河川敷。一気読みせず休み休み読んでも大丈夫ですが、自然に情景が目に浮かぶような筆致、気が付いたら読み進めてしまうリーダビリティの高さ。恐るべし、東野圭吾と再確認した作品です。