兇人邸の殺人
「屍人荘の殺人」シリーズの第3弾です。神紅大学ミステリ愛好会の剣崎比留子と葉村譲は健在です。今回は、事件を引き寄せてしまう体質の比留子が、班目機関の謎を暴くために葉村とともに廃墟テーマパークに潜入します。そして、お約束のように密室になって殺人が行われます。この作者の密室は、ゾンビが出てきたり霊能者が出てきたりと何でもありの密室が特徴ですが、今回もやはり妙なものの登場によって密室が完成してしまいます。
書き方は、章によって視点のかわる一人称の書き方です。一人称視点なので、その人の見たものしか描写されず、余計な情報が出てこないので探偵推理ものとしてはこれはありだなと思いました。ただ、時制が行ったり来たりになるので、ここは読む方は気を付けないといけません。
流れとしては、班目機関の謎を暴くため、とある会社の社長と秘書、傭兵数名そして学生2名が廃墟テーマパークに乗り込みます。そして一仕事しているとあっという間に密室が完成してしまいます。かなり厳しい密室です。本文中、随所にモノローグが入りますが面倒だからと読み飛ばさないでください。時数稼ぎの無駄なページはありません。殺人はいとも簡単に行われます。妙なひっかけはないので、どんどん読み進めてもらって大丈夫です。伏線も拾いやすいようにできています。最後の密室解除の数ページは「やられたっ!」と言いたくなるような思い付きですが、これを思いついたところでこれだけの長編がホイホイ書けるとは思えず、プロの作家さんて凄いなと思った次第です。
寝落ちギリギリまで読んで、「あれ、昨日はどこまで読んだっけ」という読み方では本作は消化できません。半日潰すつもりで読み始めてください。