下部内視鏡検査
いわゆる大腸ファイバーです。器械そのものの基本的な構造は胃カメラと同じですが、大腸内視鏡の挿入法には施設や医師によって色々な流派のバリエーションがあります。胃カメラは、極論すれば「出し入れだけなら、一ヶ月で習得」できます。しかし大腸内視鏡は、胃カメラを最低500例程度施行し、その後師匠のダメ出しを喰らいながら半年から一年かけて漸く半人前の扱いを受ける、内科に残る数少ない徒弟制度の色濃い分野です。更に濃厚な胆膵内視鏡の分野もあるのですが、あまりにも濃いので割愛します。
さて、大腸は枝分かれがあるわけではないので、勿論、力任せにやれば入ることは入るのですが、腹痛を伴ったり、穿孔や出血などの偶発症のリスクが非常に高くなります。そして何よりも、「こんな苦しい検査は二度と御免だ」と思われると、その人は血便が出るまで大腸内視鏡を受けることはないでしょう。即ち、定期的に検査を受けていれば発見できていたかもしれない大腸癌の早期発見の機会をなくしてしまうことに他なりません。これは罪です。
私のモットーは、「上品な内視鏡」。ぎゅうぎゅう押したり、「いてててて~!っと」絶叫・悶絶したりしながら入れる内視鏡は流行りません。頭の中で大腸の立体をイメージしながら内視鏡を進めてゆきます。皆さんからは、「まあ、下剤は辛いけど、一年一回受けていれば安心だし、テレビの大腸癌特集も余裕で見られるし。」という評価を受けております。
私が以前勤務していた神戸百年記念病院(旧 鐘紡記念病院)では、「胃腸は語る」や、最近では「病気にならない生き方」でお馴染みの新谷弘美先生を以前消化器センター顧問に迎えていたこともあり、早くからshinya methodを取り入れておりました。実際には、内視鏡検査の際に少量の安定剤を使用し(意識下鎮静法;conscious sedation)、挿入は腹部の用手圧迫を使用して大腸の短縮を行い、検査の苦痛を最小限度に抑えております。
唯一の注意点は、少量とはいえ安定剤を使用しておりますので、検査当日は自動車の運転等は控えて下さい。
大腸内視鏡検査の手順ですが、胃カメラと同様、抗凝固剤を内服中の人は指示に従って休薬してもらいます。胃カメラと大きく違う点は下剤を内服してもらう必要があると言う所です。具体的な手順は次回以降で。
さて、このコラム。評判は悪くはないのですが、字ばっかりで画像が少ないとよく言われます。写真を集めていますので、続編は少々お待ちください。