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2022年11月21日 - 書評のコーナー ~その81~

まほろ駅前多田便利軒

このタイトルだけではなかなか書店で手にすることはないと思うのですが、帯に「直木賞受賞作」と書いていあり、どうやらシリーズ化もされている様なので、「時間があったら読もうかな。三浦しおんの作品だし軽く読めるだろう」的な感じで購入。

内容的にはミステリーものでもなければ感動モノでもなく、作中に流れる時間を一冊の本と共有するという楽しみの本でした。短編が6個の構成ですが、隙間時間に飛び飛びで読むのではなくまとめて読んだ方が良しです。

東京と神奈川の境にあるまほろ駅が舞台。そこで便利屋を営む主人公多田のもとに訳アリの元同級生の行天が転がり込むということろから話が始まります。この多田という主人公は何ににでも首を突っ込むお人好しで、まあ便利屋という職業にうってつけの性格です。そこに転がり込むような形で行天がやってくるのですが、これがまた役に立たない。特技は寝ることとタバコを吸うことくらいで、作中でも事あるごとにタバコを吸っています。

そんな二人がまほろ駅周辺でペット預かりから端を発したトラブルに巻き込まれ、いけ好かない子供の塾の送り迎えでその輪が広がり、わらしべ長者の様にトラブルが大きくなって行くさまは些かご都合主義的ではあるものの本格ミステリーではないことを百も承知で読み進めると、それはそれで楽しく読めます。2時間程度で読めますので一気読みをお勧めします。作者の妄想の中にあるまほろ駅前をあちこち引きずり回され、駅裏の饐えた臭いや軽トラに染みついたヤニ臭さも自然と漂ってきます。文中にギュッと詰め込まれた6個の小さいイベントが終わって、適度に疲れたところで読了するといった不思議な読書体験をすることになります。

まほろ