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2020年10月23日 - 書評のコーナー ~その67~

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東野圭吾のミステリー小説です。が、ミステリーの謎解きに関しては牽強付会とは言わないまでも「そこが伏線かよっ!」と突っ込みたくなるほど強引な所もありまして、ミステリー好き的には消化不良でした。

都内での連続殺人事件。謎の数字を残した犯人が最後に狙うのは、ホテル・コルテシア東京。ホテルでの殺人事件を阻止するべく、警視庁の新田をはじめ多数の警官がホテルスタッフに扮して警備に当たります。映画化されてから本作を読んだので、主人公の新田がキムタクにしか見えません。台詞の一つ一つも、「これは初手からキムタクにやらせるためにこんな言い回しをしているのかな」と勘繰りたくもなるくらい適役です。

文体は、簡素。地の文は、○○は××をした。△△はエレベータに乗り込んだ。○○はそう言った。などと、短文をつなぐ形でテンポよく読めます。逆に言うと、会話中心で話を進めるので、小説と脚本の中間のような立ち位置です。止まることなくスラスラ読めます。万人受けです。

ホテルにはいろいろな客が来ます。とにかくほとんどがクレーム対応の話。一つ解決してもまたクレーム客の話。必殺仕事人ならば、2‐3回成敗しているレベルです。軽めの文体なので話のテンポは良いのですが、食傷気味になります。逆に、「ホテルスタッフって、大変な仕事だなあ」と感心してしまいます。ホテルを舞台としているので、石ノ森章太郎の漫画「HOLTEL」と若干かぶりますが、あちらはホテルスタッフ目線。本作は横柄な態度がイメージの警官がホテルスタッフに扮しての目線で話が進みます。あまりの理不尽なクレームに、新田がいつぶち切れるのか気になって仕方がないです。

またクレームか、と思っていたら、話は突然進みます。なんだそりゃと思う位スルスルっと話が進みます。多作の作家さんはこのあたりの話のギアの切り替えがお上手です。冗長な描写は割愛して、短文、台詞、短文、台詞でテンポよく話は進み、あっという間に終結に向かいます。読後感は、何故だか一つの映画を見終わったような感じ。

改めて、金曜ロードショーで放映していたら見てみようかなと思う一品でした。