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2020年2月22日 - 書評のコーナー ~その63~

img_5e25abfa17e5f65051f303d0f11fd184466156[1]べらぼうくん

 

また妙なタイトルですが、万城目学氏の作品なので「ああ、またか……」的にスルーです。例によって、あまり意味はありません。

この本は小説ではありません。エッセイのような自叙伝のような、まあ面白ければどちらでも構わないのですが、彼の半生が綴られております。

高校を卒業して浪人するところから書かれております。出身高校が同じなので、高校時代から書いてほしかったのですが、余りにも暗黒時代すぎて思い出すのも厭なのでしょう。そこはよくわかります。

浪人生活の心得的なものも書いてありますが、決して押しつけがましいものではありません。例によって、飄々とした文体で書かれております。いつの間にか京都大学入学後の話に移ります。大学生活はなかなか楽しいようで、文中でも京都での学生生活を推しています。

就職は順風満帆というわけではなかったようです。というのもこの頃から小説を書き始めたようで、そのあたりから人生の重心が小説に傾いて行って、妙な方向に人生が滑り出した模様です。そんな訳で、京都大学法学部なのに、ある繊維メーカの工場勤務となります。そこでも小説中心の生活を送っておりますが、いよいよ小説に本腰を入れるべく会社を辞めてしまうのです。作者の一番辛い時期であったようで、必死さが読み手にもひしひしと伝わってきます。

読んでいて思ったのが、万城目学氏は今でこそエンタメ小説の旗手ですが、もともとは純文学の新人賞を狙っていたようで、それでこそ作中に余韻棚引く描写が盛り込まれているのだなと再認識しました。今でこそ純文界隈は斜陽ではありますが、文章を彫琢する作業というのは重要なのだなと再認識しました。

万城目学氏の小説を読んだことのない人にとっては雑文記ですが、彼の小説を読んだことのある人には楽しく読み通せます。

3時間もあれば読破できます。個人的には非常に楽しく読めました。