教団X。謎めいたタイトルと20mmを超える600ページもの厚さ。作家は芥川賞作家でとくれば買わない理由はない。早速読み始める。松尾という老人の主催する宗教団体と、沢渡率いる性の解放を謳う宗教団体が出てくる。間にはそれぞれの団体を行き来してスパイのような動きをしている男女が居て。
いつになったらそれら宗教団体間の抗争や洗脳合戦が始まるのやらとページを捲っていたものの、一向にその気配はなし。松尾の団体は、人間は分子原子からできていて原子はクオークからできていて、だから人間と人間は原子と原子のぶつかり合いだとか。意識と脳の主従関係などの説明に終始して結局は何を言いたのか最後まで分からず。
一方、沢渡率いる教団は、性の解放を謳うだけあって、性描写が多いのは致し方ないとして、官能小説のような描写が随所で延々と続くのには閉口。性の解放の理念が弱すぎて、荼枳尼天(ダキニ天)や真言立川流の蘊蓄でも挟んでいたらまだ筋は通りそうなのに、この人は官能小説を本当は書きたかったんじゃあないのかなと勘繰るレベルまで執拗にくどい性描写が続きます。詰まるところは教祖の性癖で作られたような教団なので、蘊蓄に関してはそこまで緻密に作りこむ必要はなかったのかもと後で納得。
後半では公安部の暗躍やテロリズムも題材にしてはいるものの、明らかに不完全燃焼。
エンターテインメント小説としては明らかに落第点だなと思い、最後まで読了。無駄な時間を費やしました。
読了直前に気が付きました。この作家さん、芥川賞作家なので、エンタメ小説は得意分野外でした。何を言いたいのか最後まで分からず、社会に対する疑問や不満などテーマだけ与えて、あとは読者で自由に考えてください的な丸投げ感。長編の純文学を読まされました。純文学だったのなら200ページまでにして欲しかったなあ。そうでなければ、エンターテインメントっぽいタイトルはやめて欲しかったなあ。この本に関しては、評価不能です。
しかし、村上龍や羽田圭介などこの作家さんも含めて芥川賞作家って何故にこんなにも性描写が好きなのでしょうか。読んだ本がたまたまそうだったのかもしれませんが。個人的には芥川龍之介は大好きなのですが、最近の純文学は何か歪んでいるような。
何でもありの長編の純文学を読みたい人限定の一冊です。普通の人は近寄らないほうが良いです。