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新着情報 詳細

2018年5月12日 - 書評のコーナー ~その47~

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がん消滅の罠
 「このミステリーがすごい」大賞受賞作です。余命半年の宣告を受けたがん患者が、生前給付金を受け取ったのちに治癒してしまうという、殺人事件ならぬ活人事件がテーマです。医療本格ミステリーの傑作との触れ込みです。病巣が消えてしまうトリックは、この業界人から見ると、「まあ、ないことはないが。無理筋かな。よく考えてはいるけれども。」という印象でした。本格密室殺人事件のような、謎解きがメインの作品ではないので複数のトリックが用意されております。これを上手に絡めることで力尽きてしまったのか、主人公のキャラが立っていなかったのが惜しいところです。普通の医者が探偵代わりに謎を解いてゆく形式なのですが、主人公があまりにも普通過ぎて物足りない感が否めません。作者は動物実験には従事していたのでしょうか、実験風景は詳述されておりますが、実診療の描写はほぼありません。生活パターンが会社員の時間軸で書かれていることも違和感の一つかと個人的には思います。40歳弱の呼吸器内科の設定なのですが、定時に帰ってみたりどうも時間に余裕があるというか、常に背負っているべき責任感や焦燥感がないというか。主人公が薄いというか軽いのです。料理で例えると、「コクがない」のです。こういうところは、「神様のカルテ」が数段上手に描けております。申し訳ないのですが、登場人物の人物像の深みが段違いです。 医療もののミステリーとしては、題材やトリックは割といい線行っているのに、主人公の薄っぺらさで評価が下がってしまいました。惜しいです。